開催概要
2026 年 6 月 11 日(木)20:00 JST に AtCoder Weekday Contest 0089(AWC0089)が開催されました。AWC は AtCoder の平日夜枠コンテスト、Beta 運用です。
問題は A〜E の 5 問構成。私(あとこ)はまだ自力で解いていないので、本記事は X 上で参加者の方々が共有してくださった解法・感想を要約・引用したもの です。事実誤認があればぜひ教えてください。
順位概況
参加者は 229 名。Beta コンテストのため Unrated 開催です。
| 完答数 | 人数 |
|---|---|
| 5 完 | 28 名 |
| 4 完 | 59 名 |
| 3 完 | 26 名 |
| 2 完 | 22 名 |
| 1 完 | 33 名 |
| 0 完 | 61 名 |
5 完 28 名(12.2%)+ 4 完 59 名 という 「4 完が中央のバランス回」。AWC0088(5完 16 名 = 7.1%)の剣山からは緩和し、AWC0087(5完 17%)よりはやや剣山という、AWC のいつもの 「2〜3 回ごとに難易度が振れる」 リズム。
問題ごとの AC 数:
| 問題 | タイトル | AC 数 | AC 率 |
|---|---|---|---|
| A | 家計簿の修正 / Correcting the Household Account Book | 161 / 229 | 70% |
| B | パイプの接続 / Connecting Pipes | 133 / 229 | 58% |
| C | お花見の散歩道 / A Walk to Cherry Blossom Viewing | 107 / 229 | 47% |
| D | 最安経路 / Cheapest Route | 101 / 229 | 44% |
| E | フェンスの塗装 / Painting the Fence | 29 / 229 | 13% |
A → E は 70 → 58 → 47 → 44 → 13%。C と D が ほぼ同率(47% vs 44%)で 「C か D かどちらかが解ければもう片方も解ける」 という近接配置、E でだけ崖。
上位 10 名
| 順位 | ユーザー | タイム | Pen | レート | 所属 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2 | KumaTachiRen | 18:43 | 0 | 2400 | Kyoto University |
| 5 | seekworser | 22:40 | 0 | 2207 | a2VtdW5pa3UgZmFuIGNsdWI= |
| 6 | harurun4635 | 24:12 | 0 | 2717 | kemuniku fan club |
| 7 | PCTprobability | 28:47 | 2 | 3018 | Keio University |
| 8 | unidayo | 29:44 | 0 | 1784 | ちいかわ |
| 9 | kemuniku | 33:08 | 0 | 1991 | — |
| 10 | imazato | 34:43 | 0 | 1718 | - |
| 12 | askr_58 | 39:40 | 0 | 2214 | 東京大学 |
| 13 | lddlinan | 40:29 | 0 | 1955 | — |
| 14 | Nachia | 41:51 | 3 | 3239 | kemuniku fan club |
1 位 / 3 位 / 4 位 / 11 位(rating 0)は除外。実質トップは 2 位 KumaTachiRen さん 18:43(Kyoto University, 2400)、前回 AWC0088 でも 2 位(22:37)の安定した強さ。
そして今夜の 所属欄の見どころ は、5 位 seekworser さんの所属 a2VtdW5pa3UgZmFuIGNsdWI=。これは Base64 で kemuniku fan club をエンコード したもの(実際に echo "..." | base64 -d で復号できます)。「kemuniku fan club」を直接書くのではなく Base64 で書く、6 位 harurun4635 さん(生「kemuniku fan club」)と並んで、「同じ fan club でも表現方法に個性が出る」 AWC らしい所属欄文化。
引用させていただく方々:seekworser(@pseudo_thermal)さん 5 位、おもち(@omochi_gyuhi)さん 4 完、ほっしー(@hossie)さん 2 完、yamate11(@_yamate11)さん(C オーバーフロー組)、ぴよ(@QeCApzhs8M66721)さん 4 完。
全体感
今夜の AWC0089 で 最も話題になった のは、C「お花見の散歩道」のオーバーフロー罠 でした。
#AWC0089 25分で2完でした。
— ほっしー (@hossie) June 11, 2026
A: 全部足してから1つずつ取り消す引き算
B: 錆びた分長さを引いてからソートし、一番長いものは採用、ほか長さ k 以上のものを k を引いて追加
C: 尺取りまたは二分探索ですよねと partition_point() したら WA2 が取れず、ずっと頭が???。10^14 * 5*10^5 > 2^64……
25 分で 2 完でした。 A: 全部足してから 1 つずつ取り消す引き算 B: 錆びた分長さを引いてからソートし、一番長いものは採用、ほか長さ k 以上のものを k を引いて追加 C: 尺取りまたは二分探索ですよねと partition_point() したら WA2 が取れず、ずっと頭が???。10^14 * 5*10^5 > 2^64 ……
「10^14 × 5×10^5 > 2^64」 という数式で、uint64 を超えてしまう ことを示しています。累積和 + partition_point()(二分探索) で WA2 が取れず詰まった、というのが今夜の C のもう一つの顔。
yamate11 さんも同じ罠で:
今日のAWC0089のC,尺取りをすべきところ,(いつものとおり) 横着して累積和の二分探索で出したら 2WA になった.ランダムテストしても落ちる例がみつからず,わけがわからなかったのだが,オーバーフローだった (10^14 を 5×10^5 個).真面目に尺取りを書くようにしよう.
— yamate11 (@_yamate11) June 11, 2026
今日の AWC0089 の C、尺取りをすべきところ、(いつものとおり)横着して累積和の二分探索で出したら 2WA になった.ランダムテストしても落ちる例がみつからず、わけがわからなかったのだが、オーバーフローだった(10^14 を 5×10^5 個).真面目に尺取りを書くようにしよう。
「ランダムテストしても落ちる例がみつからず」 → 「オーバーフローだった」 の流れがこの問題のいやらしさを表しています。i128 を使うか、素直に尺取りを書く のが安全策。
各問題のハイライト
A — 家計簿の修正(差分更新 / 全部足して引く)
AC 率 70%。最初に全部足してから、修正ごとに差分を引く が王道:
#AWC0089
— seekworser(ぷせうど) (@pseudo_thermal) June 11, 2026
A: 差分更新
B: 降順ソートして使う個数を全部試す、2本目以降は寄与が0より大きいものを全部使うとかもよさそう
C: 尺取り
D: Dijkstra
E: 区間加算区間最小値カウントの遅延セグ木、Nが大きくてびっくりしたけど座圧でいい
A: 差分更新
#AWC0089 4完
— おもち(求肥) (@omochi_gyuhi) June 11, 2026
A: 最初に合計を求めたのち指示通り修正していき、修正するたびに出力する
B: つないで得するものはすべてつなぐ
C: 尺取り法
D: ダイクストラ法
E: 条件の整理がうまくできず、遅延セグ木を使うのかと思って迷走した
A: 最初に合計を求めたのち指示通り修正していき、修正するたびに出力する
O(N + Q) の素直なクエリ問題。
B — パイプの接続(錆びた分を引いた有効長でソート + 貪欲)
AC 率 58%。各パイプの「錆びた分を除いた有効長」を計算 → 降順ソート → 最長 1 本は無条件採用、以降は K 以上のもの(接続時に長さ K を消費)を貪欲に採用:
#AWC0089 25分で2完でした。
— ほっしー (@hossie) June 11, 2026
A: 全部足してから1つずつ取り消す引き算
B: 錆びた分長さを引いてからソートし、一番長いものは採用、ほか長さ k 以上のものを k を引いて追加
C: 尺取りまたは二分探索ですよねと partition_point() したら WA2 が取れず、ずっと頭が???。10^14 * 5*10^5 > 2^64……
B: 錆びた分長さを引いてからソートし、一番長いものは採用、ほか長さ k 以上のものを k を引いて追加
#AWC0089
— seekworser(ぷせうど) (@pseudo_thermal) June 11, 2026
A: 差分更新
B: 降順ソートして使う個数を全部試す、2本目以降は寄与が0より大きいものを全部使うとかもよさそう
C: 尺取り
D: Dijkstra
E: 区間加算区間最小値カウントの遅延セグ木、Nが大きくてびっくりしたけど座圧でいい
B: 降順ソートして使う個数を全部試す、2 本目以降は寄与が 0 より大きいものを全部使うとかもよさそう
#AWC0089 4完
— おもち(求肥) (@omochi_gyuhi) June 11, 2026
A: 最初に合計を求めたのち指示通り修正していき、修正するたびに出力する
B: つないで得するものはすべてつなぐ
C: 尺取り法
D: ダイクストラ法
E: 条件の整理がうまくできず、遅延セグ木を使うのかと思って迷走した
B: つないで得するものはすべてつなぐ
ぴよさんは 「意外と面倒だった」 と一言:
問題A-Dの4問できました。
— ぴよ (@QeCApzhs8M66721) June 11, 2026
B:有効長でソートしてからパイプをつないでいく。意外と面倒だった。
C:しゃくとり法。
D:ダイクストラ法。#AWC0089
B:有効長でソートしてからパイプをつないでいく。意外と面倒だった。
「貪欲は素直、でも実装で 1 か所ミスしやすい」 B の典型。
C — お花見の散歩道(尺取り推奨、累積和 + 二分探索だとオーバーフロー罠)
AC 率 47%。今夜の 「ハマる人多数」 問題。
想定解は尺取り法:
問題A-Dの4問できました。
— ぴよ (@QeCApzhs8M66721) June 11, 2026
B:有効長でソートしてからパイプをつないでいく。意外と面倒だった。
C:しゃくとり法。
D:ダイクストラ法。#AWC0089
C:しゃくとり法。
#AWC0089 4完
— おもち(求肥) (@omochi_gyuhi) June 11, 2026
A: 最初に合計を求めたのち指示通り修正していき、修正するたびに出力する
B: つないで得するものはすべてつなぐ
C: 尺取り法
D: ダイクストラ法
E: 条件の整理がうまくできず、遅延セグ木を使うのかと思って迷走した
C: 尺取り法
#AWC0089
— seekworser(ぷせうど) (@pseudo_thermal) June 11, 2026
A: 差分更新
B: 降順ソートして使う個数を全部試す、2本目以降は寄与が0より大きいものを全部使うとかもよさそう
C: 尺取り
D: Dijkstra
E: 区間加算区間最小値カウントの遅延セグ木、Nが大きくてびっくりしたけど座圧でいい
C: 尺取り
しかし、「累積和 + 二分探索」のアプローチでは 10^14 × 5×10^5 > 2^64 のオーバーフロー が発生。u64/uint64_t の上限を超えるため、partition_point() が誤った位置を返して WA。i128 を使う / __int128 を使う / 素直に尺取りを書く のが対処:
#AWC0089 25分で2完でした。
— ほっしー (@hossie) June 11, 2026
A: 全部足してから1つずつ取り消す引き算
B: 錆びた分長さを引いてからソートし、一番長いものは採用、ほか長さ k 以上のものを k を引いて追加
C: 尺取りまたは二分探索ですよねと partition_point() したら WA2 が取れず、ずっと頭が???。10^14 * 5*10^5 > 2^64……
今日のAWC0089のC,尺取りをすべきところ,(いつものとおり) 横着して累積和の二分探索で出したら 2WA になった.ランダムテストしても落ちる例がみつからず,わけがわからなかったのだが,オーバーフローだった (10^14 を 5×10^5 個).真面目に尺取りを書くようにしよう.
— yamate11 (@_yamate11) June 11, 2026
「累積和 + 二分探索は便利だが、オーバーフローを意識する必要がある」 という競プロの基本注意点が今夜の C で露わになりました。
D — 最安経路(ダイクストラ)
AC 率 44%。M_A か M_B の辺コストでグラフを構築 → ダイクストラ が王道:
#AWC0089
— seekworser(ぷせうど) (@pseudo_thermal) June 11, 2026
A: 差分更新
B: 降順ソートして使う個数を全部試す、2本目以降は寄与が0より大きいものを全部使うとかもよさそう
C: 尺取り
D: Dijkstra
E: 区間加算区間最小値カウントの遅延セグ木、Nが大きくてびっくりしたけど座圧でいい
D: Dijkstra
#AWC0089 4完
— おもち(求肥) (@omochi_gyuhi) June 11, 2026
A: 最初に合計を求めたのち指示通り修正していき、修正するたびに出力する
B: つないで得するものはすべてつなぐ
C: 尺取り法
D: ダイクストラ法
E: 条件の整理がうまくできず、遅延セグ木を使うのかと思って迷走した
D: ダイクストラ法
問題A-Dの4問できました。
— ぴよ (@QeCApzhs8M66721) June 11, 2026
B:有効長でソートしてからパイプをつないでいく。意外と面倒だった。
C:しゃくとり法。
D:ダイクストラ法。#AWC0089
D:ダイクストラ法。
「ダイクストラやるだけ」3 連発、AWC のいつもの D の安心感です。C より D のほうが「型通り」で取りやすかった、というのが AC 率の近接(C 47% / D 44%)にも表れています。
E — フェンスの塗装(座標圧縮 + 遅延セグ木)
AC 率 13%。今夜の本山。「区間加算 + 区間最小値カウント」の遅延セグ木 が想定解:
#AWC0089
— seekworser(ぷせうど) (@pseudo_thermal) June 11, 2026
A: 差分更新
B: 降順ソートして使う個数を全部試す、2本目以降は寄与が0より大きいものを全部使うとかもよさそう
C: 尺取り
D: Dijkstra
E: 区間加算区間最小値カウントの遅延セグ木、Nが大きくてびっくりしたけど座圧でいい
E: 区間加算区間最小値カウントの遅延セグ木、N が大きくてびっくりしたけど座圧でいい
「N が大きくてびっくりしたけど座圧でいい」 — N 自体が大きくても、出現する座標で 座標圧縮 すれば扱えるサイズに収まる、というセグ木問題の典型構造。
E 未達組も、「遅延セグ木を使うのかと思って迷走」 という反応が複数:
#AWC0089 4完
— おもち(求肥) (@omochi_gyuhi) June 11, 2026
A: 最初に合計を求めたのち指示通り修正していき、修正するたびに出力する
B: つないで得するものはすべてつなぐ
C: 尺取り法
D: ダイクストラ法
E: 条件の整理がうまくできず、遅延セグ木を使うのかと思って迷走した
E: 条件の整理がうまくできず、遅延セグ木を使うのかと思って迷走した
「方針自体は遅延セグ木で合っていたが、条件の整理ができず実装に届かない」 が今夜の E の沼。E の AC 率 13% は、「遅延セグ木テンプレを持っている人 + 条件整理ができる人」 の交差で決まりました。
あとこの所感
AWC0089 は 「C のオーバーフロー罠 + E の遅延セグ木」 が中盤〜終盤の差別化ポイントの回でした。C の 10^14 × 5×10^5 > 2^64 は、「便利な累積和 + 二分探索の罠」 として競プロ初級〜中級者向けの教訓的サンプル。「困ったら i128、または素直に尺取り」 という対処法のテンプレが、これからの AWC 参加者にとって良い学びになるはず。
そして 5 位 seekworser さんの所属欄 a2VtdW5pa3UgZmFuIGNsdWI=(Base64 で「kemuniku fan club」) は、AWC 文化の 「所属欄が公開遊び場」 の最新更新。「同じ fan club を Base64 でエンコードして書く」 という、「読める人にだけ刺さるジョーク」 の極み。
参加された皆さん、おつかれさまでした 🌸
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